2006/11/21

おれは差別と黒人が大嫌いなんだ

最近長文が多いけど勘弁してね。今回も長いよ。だいぶ前に見てきた同性愛者サークル主催の講演会+パネルディスカッションについて。ちょっと無言では終われなかったので。

参加動機。はっきり言って興味本位でしたが、馬鹿にして入っていったわけでもありません。むかーし多感な時期にゲイの人に迫られたせいで自分に言い寄ってくるゲイは殺戮対象なんですが、そうでないゲイは好きにしてもらってて構わない、というスタンスです。人をとやかく言える趣味でもないし。

前半はレズビアン議員の講演会。同性愛者に対して異性愛者は知らず知らずのうちに色眼鏡をかけている、という話が印象的でした。これはこのテーマに限らず「黒人は暴力的」「朝鮮人はカッとなりやすい」「関西人は厚かましい」等、何気なく取り入れがちな差別的言辞への防衛策になると思いました。おれの「好きにすれば?」というスタンスでは実は不十分で、意識して修正するようにしないと本当に平等な視線は得られないのかも。コトの真偽はさておいて、そういう可能性には気付かされました。

何でちょっと奥歯に物が挟まったような言い方なのかというと、その後のパネルディスカッションでまた思うところがあったから。要するにイベントを主催する側のゲイ学生の意識が非常に低い。

Q&A。セクシャルマイノリティーについて研究していたという男性(ノンケ)からの質問。レズビアンのイベントにバイセクシャルの女性と参加したら、あからさまに歓迎されなかった、というこの男性。彼は「自分も空気読まなかったかもしれないんですけど」と認めつつ、そのとき、いわゆるマイノリティである彼らが逆にマジョリティになる機会が今後増えていくだろうことを指摘し、その場合にどういうスタンスをとるか、という質問をした。少数派の立場を理解した上でとれる行動というのがあるのではないか、ということだ。おれはこれには興味をそそられた。少数派になったことのない人間には少数派の気持ちは理解しにくい。だからこそ――セクシャルマイノリティとして、心性に根ざした少数意識を抱えている人間として、性意識以外の少数派に向けられる気持ちがあるんじゃないか――。

結論から言うと、彼らはそんなことは何も考えてなかった。ただ、同性愛者のイベントに異性愛者が立ち入ることのリスクを指摘するだけだった。レズビアン議員の方はさすがに質問者の意識に気付いて「非常に参考になります」と言ったが、自分たちが差別者に回り得るという指摘については何も言及しなかった。

『神聖喜劇』第五部・第四「階級・階層・序列の座標」に、印象的な場面がある。床屋、版工という職業を蔑視されてきた謂わば被差別者である教育兵が、虐げられてきた者としての立場にも拘らず、まったく無自覚に以下のような発言をする場面だ。
「おれたちが、なんぼ手職の人間じゃちゅうても、四つか何かじゃありゃせず、どっこも違うところはないとじゃもん。相手がだれだったちゃ、人様からそげんむやみに見下げられにゃならん訳はないよねぇ。」
無論問題とすべきは「四つ」=被差別部落出身者に対する蔑称である。自らは差別を受け、同じ人間を蔑視することの愚かさを身をもって知りながら、自分はそれと知らずに他人を貶めてしまう。この根の深さ。

セクシャルマイノリティーがいま日本でどんな差別を受けているか、おれは知らない。しかしそれを問題にすべき場で彼らが被差別者としての意識しか持ち得なかったことは印象的だった。その姿勢から何が生まれるのか、おれには分からない。そして自分自身がそれ以上に危うい立場にあることも意識し、戦慄するばかりだった。おれはだから、かのサークルの gay (英語の「陽気な」などの意味も含むそれ)的要素を、なんとなく疎ましく憎く思ったのだった。自己嫌悪を反映して。表面上平和な世だからこそ、病を感じる。

2006/11/30

カート・ヴォネガット・ジュニア『猫のゆりかご』

なんかすっかり読書日記になってる。

猫のゆりかご猫のゆりかご
カート・ヴォネガット・ジュニア 伊藤 典夫

早川書房 1979-07
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いきなりディテールから入るけど、おれは<グランファルーン>をそれほど否定しようとは思わない。ボコノン教にそれほど感心しなかったせいかもしれない。さらに言うと、「わたし」=ジョーナの筆致に共感しなかったせいなんだろう。おれは一人称の物語には手もなく騙されがちな読み手なので、ここ数年は却って尤もらしい視点ほど疑ってかかり、そのせいでひどく疲れてしまう。修練不足。そのため、「わたし」に引っかかると作品全体への読みが歪になってしまうことがある。以下はそのつもりで読んでいただきたいです。
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